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あいちアートプログラム

選考委員と講評

[五十嵐太郎] [伊藤まゆみ] [角奈緒子] [拝戸雅彦]


■拝戸雅彦

愛知県美術館企画業務課長

愛知県生まれ。1991年名古屋大学文学研究科博士課程後期美学美術史専攻中退。1992年10月から2008年3月まで愛知県美術館の学芸員として勤務し、美術館で開催された現代美術展に関わる。「イタリア美術:1945-1995」(1997)、「ファウスト・メロッティ」(1999)、「戸谷成雄-森の襞の行方」(2001)、「アジアの潜在力」(2005)、「愉しき家」(2006)、「サイクルとリサイクル」(2007)など。ルイジペッチ現代美術館(プラート市、イタリア)での日本現代美術展「先立未来」(2001)や、ソウル市立美術館でのアジアの都市単位の美術動向を扱う「city_net_asia」(2006)の名古屋セクションのキュレーションにも関わる。あいちトリエンナーレ2010と同2013に共同キュレーターとして参加。あいちトリエンナーレ2016はチーフキュレーターとして参加。


■講評

 あいちのアーツチャレンジは今回で10回目を数える。私が在籍していた芸術祭の推進室が立ち上がる、二つ前の年度にあたる2007年の初回の立ち上がりにも関係していたので、紆余曲折はありながらも、着実に歴史を刻んできた、という印象を受ける。
  さて、現在の愛知芸術文化センターが開館から25年目に入ることで改修すべき建物部分があり、工事に入り、これまで使用していた12階アートスペースのGとHが使えない、ということになった。また、選考するアーティストの数も12組から8組に減った。国内的に、若いアーティストを対象とする公募展は盛んになってきている印象がある中で、壁面や床面の量が少なくなり、部屋のヴァリエーションも減っていて、さらに、展示できるアーティストの数も減ったにも関わらず、前回並みの応募数が寄せられたことは、アーツチャレンジの場に出品し見せることに、若いアーティストなりに意味があると、考えられていることの結果だと思う。審査する側には、送付された資料をしっかりと読み込んで、来場者に対して見応えのあるいい展示をする責任がある。
  送られたファイルを見ながら悩むのは、アーティストからの提案と場所のマッチングである。アートスペースXも含めていずれの場所も、その使い方にはさまざまな条件がつくイレギュラーな場所で、部屋のディメンションと写真から、仮に現地説明会まで参加できたとしても、緻密な展示プランを構想するのは相当難しい、と感じる。したがって、特定の場所を指定してきたアーティストのリストからその場所にふさわしい人を選ぶ、というよりは、場所は設定課題のように考えて、全体のリストから、「その人の展示を見てみたい」、と思う、アーティストを選ぶようにした。また、選考するアーティストの数が減ったこともあり、歩く距離も含めた鑑賞者の利も考えて、三つ以上のフロアに展開しないようにも配慮した。そのため、地下2階と地下1階のみで展開するようにし、コンパクトにして見やすい展開になるように考えてみた。
  愛知芸術文化センターには入口が複数あるが、仮に来場者の動線を単純化してみよう。オアシスからセンターに向かう地下通路を抜け、最初に入るセンターの地下2階のフォーラムには、土木をテーマにした立体を作る椋本真理子のダムが登場する予定。これは形を簡素化したミニマルな彫刻にも見えるが、元となる素材は巨大なもの。実際の物体と、頭の中のイメージとのユーモラスなギャップを楽しみにしたい。地下2階から見上げると、地下1階の踊り場に展示された吉田絢野の横長の「地層絵」が見えてくるだろう。これを彼女は「人の抜け殻」と呼ぶ。アートプラザの中にあるヴィデオルームは今回、初めて使用する場所。音に極めて繊細な聴覚を持つという山本愛子が、糸を用いて「沈黙のなかにある音」をテーマに作り上げる予定。アートスペースXに向かう通路には、小さな箱が壁に8つ並んでいるが、そこには小笠原周が各箱をマンガのコマにも見立てて、ボクシングを戦う男の姿のシークエンスを彫刻化する。瞬間を永遠化し凍結してきた、身体に関する具象彫刻に新たな可能性が見えるかもしれない。通路奥にあるアートスペースXでは、さまざまな形が入り乱れるイメージの平面を、ほぼモノクロームで描いてきた小松原智史が展示する。平面化されたイメージならではの洞窟が登場するかもしれない。次に、一度、通路からガラス扉を開いて外に出て、左側に設置された箱はとりあえず無視をしておいて、踊り場まで上ってみる。そこには佐藤愛代が制作した、愛知の「わらべうた」をテーマとする新作アニメーションが設置されているはず。予期しない大胆な展開を見せるアニメーションを鑑賞した後に、階段を下りるとき、道楽同盟が設置した左側の装置から小さな音が聞こえてくることになるだろう。その音をもう一度、確かめるために、階段をあらためて上る羽目になるかもしれない。
  対照的でありながら、どこかで繋がっているように見える、それぞれの作品が、鑑賞者の知性と感覚を短時間のうちに揺れ動かしてくれることを期待する。私は彼らの提案だけで頭の中で十分に堪能した気分にはなっているが、作品が具体化したときに、想定以上のことが起こっていてほしい、とも思う。



あいちトリエンナーレ地域展開事業実行委員会事務局
〒460-8501 名古屋市中区三の丸三丁目1番2号 (愛知県県民生活部文化芸術課内)
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